ディスクメディアの終焉

 昨年、今年とパナソニックやソニーがBlu-rayディスクの製造を段階的に終了するというニュースを発表している。無理もない。時代は変わったのだ。

 その昔、テレビ放送というものをたいそう貴重だと感じて、なんとしてでも残しておきたいと願っていた時代がある。1970年代後半〜80年代までだ。特に映画はまだビデオソフトというパッケージで購入することができないため、テレビで放映する日曜洋画劇場とか水曜ロードショーなどの番組で放送される人気映画をビデオテープに録画したかったのである。その後、映画配給会社からビデオソフトで販売されるようになるが、価格が1本につき1万5千円以上するという価格設定のため、おいそれと買える代物ではなかった。価格が高くなってしまうのは、テープという特性上、生産する(コピーする)には実時間を要するからである。

 2000年頃になるとビデオテープの代わりにDVDというディスクメディアが登場し、価格もこなれてきて、本当に好きな映画ならパッケージを購入しても良いと思えてきた。僕はこの頃、自分のビデオカメラで撮影した旅行記録などをMacの編集ソフト「iMovie」を利用してよくDVDに焼いたりしたものだ。当時はAppleがDVDの記録用ディスクを販売していたりしていた。

 テレビの形も2000年を過ぎるとブラウン管から液晶に変わっていき、映像のクオリティの優劣は残酷なまでにクッキリわかるようになってきた。そしてそれに対応するかのように2007年頃には、より高画質のBlu-rayという企画のディスクメディアが登場した。

 僕は映像ソフトとしてはBlu-rayディスク(以下、BDと略す)は購入したものの、ブランクディスクを購入してテレビ番組のダビング用途に利用することはほとんど無かった。テレビ放送が地上デジタル波になり、メーカーが簡単にダビングを許さなかったので面倒になったのだ。それに見たい番組がダビングしてあるディスクを見るには、棚に片付けた中からそのディスクを見つけてきてレコーダーのトレイに載せてローディングさせ、メニュー画面を開いてから見たい項目を決定するというの操作が面倒に感じた。ハードディスク上のデータなら待ち時間ほぼゼロで再生させることができる。

 そして一度ハードディスクに録画したテレビ番組をBDにダビングするには、代わりに元のハードディスクのデータを消去することが条件(コピーアットワンス)だったのも不自由に感じた。デジタルだからまったく劣化しない複製がいくらでも出来てしまうので、著作権上の脅威となったわけだ。

 1970年〜80年中頃まで、アナログレコードをカセットテープにダビングしてウォークマンを使ったり車の中で聴いたりするのは、個人的な利用の範囲内ということで黙認されていたのだが、これはアナログでコピーするという行為が、原理的に必ず品質の劣化を招くためだ。

 BDのダビングに関しては、後に9回までのダビングと1回のムーブができる方式の「ダビング10」になったらしいが、僕はその頃にはすっかりテレビ離れをしてしまい、BDにまでダビングして残そうという番組も少なくなってしまった。これには、巷でよく言われる、コンプライアンス問題によるテレビ番組の品質低下があったと思う。
 ついにはハードディスクが一杯になったら、また別のBDレコーダーを買ったり、外付けのハードディスクを買ったりするようになる。つまりダビング用途としてのBDは使わなくなったのだ。

 さらにこれに加えて、昨今はTverやU-nextなど、録画をしていなくても、評判を聞いて後から見逃し配信で番組を見られるようになった。つまり見たら消すような番組はハードディスクにすら録画しなくなったわけだ。そりゃあハードディスクの番組をダビングするためのBDの生産は終了するだろう。

 まず間違い無くCDとBlu-lay(もちろんDVDも)は将来無くなる。すべては配信に変わり、それらを見る/聴く権利を購入するようになる。
 例外としてアナログレコードは残ると思う。レコード針が埃や傷を拾ってプチッ、パチッとノイズを出すため、CDよりも快適性は少ないと僕は感じているが、骨董品としての面白さ、大きなジャケットの芸術的価値があるために残っていく。

 もちろん配信ということは、手に取れるモノとしての価値観が無くなるということであり、それはそれで新たな問題を生じるとは思うけど、まあ、その話はまたいつか別の機会に。

2024年7月26日

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