11月6日(水曜日)晴れ


  映画を2本続けて鑑賞した。1本目は、もしもビートルズがこの世にいなかったらという、音楽ファンタジーの「イエスタデイ」。まず前提が無理矢理すぎるけど、ビートルズを知らない世代に彼らの楽曲を届けるということでは、大成功しているだろう。だって、平日だというのに映画館はかなりの客足。しかもほとんどが若者!これはびっくりした。「ボヘミアンラプソディ」のような伝記映画ではなく、あくまでも主題は黒人青年と白人女性とのラブストーリーにしているのがいい。ビートルズに関係無く、1本の恋愛映画として楽しめる。ただ、気になるのは、ビートルズのそれぞれの名曲は、あの時代あの空気の中で発表されたからあれほど売れたのであって、今やビートルズのような楽曲は星の数ほどある。それらを聴いてきた現代の若者が、純粋にビートルズの楽曲を全然違うカバー演奏でそれほど絶賛するかな・・・と考えてしまった。楽曲の魅力で言えば、クイーンやエルトン・ジョン、ビリー・ジョエルだって負けないしね。

 もう1本は邦画の「スペシャルアクターズ」。あの「カメラを止めるな」の上田監督の新作だ。どうも流行っている様子はなく、上映館や上映回数もどんどん少なくなっているようで、不安だった。匿名掲示板でもほとんどけなされまくってるし。ところが、鑑賞してみて、やっぱりこの人は才能あるなと再認識した。設定が面白いし、役者さんはみんな熱いし、話の結末はなかなか見えてこない展開が続く。そしてラストはちゃんと役者さんへの愛が感じられる。ストーリーは、緊張すると気絶してしまう役者志望のさえない若者が、インチキ宗教団体に潜入して、その悪事を暴くというもの。雰囲気としては仲間由紀恵が演じていたテレビドラマの「トリック」に似ている。だからポスターもそのノリで作ってあったようだ。この映画、よく制作がOKになったなと関心した。こんな映画がヒットされちゃ困る立場の人って相当いるんじゃない? だからそういう人達はこの映画はつまらないとディスるわけだ。上田監督の手腕を認めている人なら今作も見てみたほうが良いと思う。

11月9日(土曜日)晴れ


 個人的には今年の最大の話題作だと言っても過言ではない。「ターミネーター:ニュー・フェイト」が公開された。「ジョーカー」の時に3日でパンフレットが一時売り切れになってしまったことから、今回は封切り2日目に見に行った。場所はまたもミッドタウン日比谷。ターミネーターシリーズは1作目が低予算にもかかわらず大ヒット。そしてたっぷり制作費をかけた続編の「T2」もそれ以上の大ヒットとなり名作となった。ところが売れすぎたことと、ジェイムズ・キャメロン監督の私生活のゴタゴタ?で彼に続編を作る権利は無くなり、キャメロン不在のまま3作目、4作目、5作目が作られていった。そして作る度に駄作だ、なんでこうなった!と批判されてきたのだ。それが今回、権利関係も修復され、キャメロンが製作に大きく関わった(監督はしていない!)正式な「T2」の続編となる「ターミネーター:ニュー・フェイト」が作られたのだ。僕のようなキャメロンの信仰者はこの時を待っていた。今度こそ、もう一度「T2」を越える驚きとスリルと感動を頼んだぞ、という思いだった。
 ところが、封切り直前にアメリカで大コケしたという話が飛び込んでくる。ウソでしょ、と疑心暗鬼になりながら映画館に足を運んだ。そして見た。納得した。まだ封切り3日しか経っておらず、これから見る人たちもいるだろうから、ネタバレは何も話したくない。別の方向から話そう。映画「イエスタデイ」を見た時に、もし2019年の現代に、ビートルズを知らない若者にビートルズの曲を口ずさんだからと言っても、「凄い名曲ですね」と反応するだろうか、ということ。僕らはイエスタデイにしろ、レット一イットビーにしろ、ヘイジュードにしろ、すべて名曲だと刷り込まれているからそう反応してしまうが、それはその時代の音楽の状況、世の中の流行、空気感の中で受け入れられ、絶賛されたものだ。ターミネーターも、あの時代には凄かったのだが・・・ということ。
 もう一つは、年老いたロックバンドを例に話そう。例えばKISS。来月来日公演を行うのだが、僕は行かない。ロックとは若者がエネルギーを爆発させるからこそ、ロックなのであって、ステージを駆け回ることもジャンプも出来なくなったのであれば、奏でる音楽も変えるべきなのではないかというのが持論だ。ロックミュージックの理想を考えれば、老兵は去るべきなのかも知れない。ところが、現代の若者はロックではなく、ヒップホップのほうに行ってしまった。それに、プロモーターとしては無名の若者ではなく、30〜40年かけて築いたネームバリューのほうが失敗することなく大きな儲けになる。そういう事から、20世紀に売れた有名バンドが老体にむち打ってツアーに出なければならないという事情。なんか違うと思うんだがな。「ターミネーター:ニュー・フェイト」を見ていて、そんな二つのことをずっと考えていた。これから見に行く人は、大きすぎる期待をせずに見に行くことをお勧めする。

11月15日(木曜日)晴れ


 数日前の話だが、邦画の「マチネの終わりに」を鑑賞した。福山雅治が世界的なクラシックギタリストの役で恋愛ドラマを演じる。評判は良いようだが、僕は職業上どうしても音楽が気になってのめり込めない。まずクラシックギターがこんなにもコンサート会場を満席にするなんてあり得ないしな・・・などと考えてしまう。福山演じるギタリストの十八番はバリオスの「大聖堂」。これをセゴビア没後二十年の記念コンサートでも演奏するのだが、セゴビアって大聖堂は録音していないと思うんだが・・・とか、感情的な言い合いのシーンでアルベニスのアストリアスがかかるとか、もうなんかベタすぎて気になる〜。クラシックギターの魅力を存分に盛り込もうとするのは分かる。でもそれだったら、使うべき名曲はひとつしかないだろう。アルハンブラの想い出を終始流していればいい。あ、でも福山さんが練習しても当て振りだってバレてしまうのか。こんな職業病の人間じゃなければ、そして大人の女性であれば、魅力的な映画として鑑賞できると思う。ちなみに「マチネの終わりに」とは、ウイークエンドの夜ではなく午後のコンサートの後、まだ夕方になる前にという意味なのね。

11月18日(日曜日)晴れ


 現在、最後のワールドツアー中のアメリカ・ハードロックバンドのKISSに一大事が起きている。リード・ボーカリストの立場にあるポール・スタンレイがインフルエンザにかかり、それを機に、喉の感染症にかかってしまったらしい。その関係で11月中旬から12月頭にかけてのオーストラリア、ニュージーランドの公演をキャンセルせざるを得なくなった。実はその後に12月8日から19日まで日本公演が組まれている。この日本公演もキャンセルされるのではないかと心配されているのだ。日程を見ると、今年の日本公演が終わると、来年の1月はツアーが無く、次は2月からだ。となると、万全を期すためには日本公演までをキャンセルして来年に備えるというのも十分にあり得る、というか、健康のことを考えればそうするだろうな。僕は好きなメンバーのエース・フレイリーが参加しないこともあり、今回はチケットを買っていないが、すでに追っかけで遠征するために飛行機やホテルの予約を済ましている人もいる。好転を願うのだが。

11月20日(水曜日)晴れ


 賛否両論の映画「ターミネーター:ニュー・フェイト」が公開中だが、そのお祭り気分を盛り上げるために1991年の「ターミネーター2」がデジタル修復版として、4K画質になって販売されている。iTunesでは昨日までリーズナブルな価格で買えたことから、思わずポチって見てみた。すると、まあ、驚くほどクリアな映像に感動する。そしてシュワルツネッガーもリンダ・ハミルトンも若くてはつらつとしている。そうだよな、やっぱりアクション映画の主役ってこうじゃないといけない。歳を重ねたらクリント・イーストウッドのように渋い老人役で演技を見せるという手もあるのだが、シュワちゃんはそういうタイプじゃないからな。
 あらためて鑑賞して思うのは、この作品は1作目の「ターミネーター」とセットにすることでその価値を上乗せしているということ。まだシュワちゃんが味方だと判明するまでの展開は、1作目を見て楽しんだ人ほどハラハラドキドキする。こういう雰囲気が「ニューフェイト」の方には足らなかった。CG技術はあれだけ進化しているけど、やはり「ターミネーター2」の敵役T-1000のほうがゾワ〜とするほど恐ろしい。もう何度も見たからと思っている人にも、是非このデジタル修復版でもう一度鑑賞することをお勧めしたい。

11月23日(土曜日)晴れ


 大学で僕が受け持っている「ポピュラー音楽史」は15週間に渡ってジャズの終焉からEDMまでの歴史を辿っていく。22日の金曜日は第9週目で「パンクムーブメントについて」だった。もちろんセックスピストルズやクラッシュなどのパンクの楽曲は紹介するが、さすがにワンパターンになってしまうので、パンクの人達が反発した音楽としてAORの代表、ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」もかける。授業の最後に必ずその時代の名曲をかけて終わるようにしているが、この日はプログレの代表、キング・クリムゾンの「21世紀の精神異常者」をかけた。その時の前振りはこうだ。「ところで、今週はパンクについて勉強したけれど、パンクロックを奏でた人達は曲の長さが膨大になりがちなプログレッシブロックにも反発していた。プログレとはいったいどんな音楽なのだろう。今日は最後にプログレのもっとも有名な曲をかけてみよう。だってね、ポピュラー音楽史の授業でも履修してなきゃ、ひょっとしたら、君らは一生プログレなんて聴かずに生涯を終わるかも知れないんだから」。
楽曲が終わって授業終了、退室になると、3人の学生が質問があるらしく話しかけてきた。その中の一人、女学生は「最後の曲みたいなのをもっと聴きたいんですが、どうやって調べたらいいんですか?」と言うので、キング・クリムゾンの曲のことだね。普通に「プログレ」という言葉でググってみるといいよ。とりあえず「キング・クリムゾン」で調べてストリーミングやYoutubeで聴いてごらん。
 う~ん、プログレにのめり込んでくれると面白いんだけどね。
 ところで、写真は今年のボジョレヌーボー。美味しいローストビーフと共にいただいてみた。

11月29日(金曜日)晴れ

 音楽の著作権について考えてみた。著作権に縛られない方法はある。自分の作った曲で儲けようとしなければいい。また他人の作曲した作品を演奏する行為で儲けようとしなければいいのだ。ただそれだけのこと。単純な話だ。ジャスラックが請求してくるのは、コンサートが有料だった場合のみであって、無料のコンサートからは徴収しない。もちろん無料でも「こういう作品を演奏します」ということと「無料です」ということは伝える義務があるが、ジャスラックが徴収できない以上、会社はたいして興味を示さないだろう。では作曲者の気分はどうだろうか。自分の作曲した作品をどこかの誰かが演奏して高額の収入を得ているいうのならば気分は良くないかも知れない。少しは自分にも収入を分けてくれとい思うだろうか。しかしその演奏が無料だとしたら・・・・作曲家は、演奏家に対して自分の楽曲を演奏して世に広めてくれてありがとうと感謝するのではないだろうか。なんと平和な世界だろう。
 しかし、実はこれは理想論であって、現実にはそうはならない。なぜなら、「そういう演奏が聴けるのなら、俺は金を払ってでも聴きたい」という奇特な人が出てくるからだ。世の中難しいね。

12月2日(月曜日)曇り時々雨


 移動の関係で時間が取れるので、新宿三丁目で映画「ドクター・スリープ」を見てみた。ダメダメだった(笑)。この映画は40年前にスタンリー・キューブリックが監督した「シャイニング」の続編という触れ込み。「シャイニング」はインディアンの墓地を潰して建設したホテルにインディアンの怨念がこもり、代々白人家族を生け贄にしているという恐怖映画だ。とにかくカメラワークや美術が凝りに凝っており、主役のジャック・ニコルソンの怪演が伝説的な作品だ。
 ところが、「ドクター・スリープ」では「シャイニング」で惨劇から生き残った子供が40代の中年になり、新たに超能力を持った黒人女性の子供(失礼ながら、ちっとも可愛く見えない。なぜ白人の美少女、または美少年にしなかったのか!)と協力してゾンビを倒すというぶっ飛んだ話になっている。ゾンビたちは人間の恐怖や絶望によって吐き出される白い息を吸い込むことによって永遠の生命を維持しているらしい。これのどこが「シャイニング」の続編なんだ?と思って見ていると、最後の30分くらいでようやく「シャイニング」の舞台であるホテルが出てくる。でも2時間以上の上映時間、ずっと鑑賞しながら考えていたのは、やっぱりスタンリー・キューブリックは天才だったんだなという確認事項だった。